メニュー

      【財務会計】平成22年度・第18問がエグい。

      こんにちは。行政書士の遠藤です。

      中小企業診断士試験の勉強を開始して約2ヶ月。現在はひたすら財務会計の過去問を解いています。

      基本的に難易度の高い問題は理解できなければ飛ばしているのですが、デリバティブの問題で解けそうなのに分からない問題があって、なんか引っ掛かったんですよね。解説を読んでも理解できないし、ググってもよう分からんし…で、諦めかけていましたが、なんとなーく尻尾が掴めた気がしたので、備忘録してまとめておくことにしました。

      【問題】平成22年 第18問

      次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

      事務機器の販売を行っているF社は、得意先であるアメリカの会社から販売代金100万ドルを1ヵ月後に受け取ることになっている。F社は円高傾向を予想しており、為替変動リスクをヘッジするためにZ銀行と1ドル98円の予約レートで為替予約(ドル売り)を結んだ。

      一方、ゲームソフトの販売を行っているG社も同じく販売代金20万ドルをアメリカの会社から1ヵ月後に受け取ることになっている。G社もまた為替変動リスクに備えるため、先物市場においてドルの1ヶ月物先物を先物価格100円にて20万ドル分売建てた。なお、両者の商品販売時であるこの時点での直物レートは1ドル=102円であった。

      さて、1週間が経過した後、当初の予想に反し、直物レートは1ドル=105円の円安となった。これを受けてG社は反対売買による差金決済を行った。このときの先物価格は1ドル=103円であった。その後1ヶ月を経過し、販売代金受け取り時における直物レートは1ドル=108円になっていた。

      (設問1)
      F社の為替予約による損益と直物による損益とをあわせたネットの損益として最も適切なものはどれか。

      ア 1,000万円の損失
      イ 400万円の損失
      ウ 600万円の利益
      エ 1,000万円の利益

      (設問2)
      G社の通貨先物取引による損益と直物とをあわせたネットの損益として最も適切なものはどれか。

      ア 160万円の損失
      イ 60万円の損失
      ウ 60万円の利益
      エ 120万円の利益

      参考書、他のホームページ等に解説が載っていますので、正しくはそちらをご参照ください。以下は、私の妄想・憶測、不十分な理解が含まれていますのでご利用は計画的に…

      【私の理解…】

      まずは1問目から。

      まずもって、問に「F社の為替予約による損益と直物による損益とをあわせたネットの損益として最も適切なものはどれか」ってあるんですけど、「為替予約」って「為替先物予約」って呼ばれているのに、先物取引じゃなくて先渡取引なんですよ。先物は企業と取引所間の取引、先渡は企業と銀行間で取引所を通さずに行う相対取引でしたね。ここではあまり関係ない知識ですが…笑

      1問目は素直に考えればわかりやすい問題です。問の通り、「F社の為替予約による損益」と「直物による損益」に分けて考えてみます。

      まずは直物から。「両者の商品販売時であるこの時点での直物レートは1ドル=102円」で、「販売代金受け取り時における直物レートは1ドル=108円」でした。販売したときのレートと、代金を受取るときのレートの差をみて、先物じゃなかったら得られていた損益を考えるので、1ドルあたり6円ぶん得してる=6円✕100万(600万円)利益が出るはず、と考えられますね。

      次に為替予約について。「F社は円高傾向を予想しており、為替変動リスクをヘッジするためにZ銀行と1ドル98円の予約レートで為替予約(ドル売り)を結んだ。」とは、どういう意味なのかを考えます。

      円高になると、100万ドルの支払いを受けても、円換算にすると目減りしてしまいますね。「商品販売時であるこの時点での直物レートは1ドル=102円であった」けれど、これから円高になると考えたF社は、当時の予約レートであった「1ドル=98円」で為替予約を結びました。97円、96円になったら困る、とF社は考えたわけです。

      為替予約とは、「販売代金100万ドルを将来受け取る際に、1ドルを98円換算で円をゲットする」ためのものです。この為替予約はオプション取引と異なり、都合が悪くなったら利用しない、という選択肢はなく、予約した為替レートで確実に実行されます。

      つまり円安だろうが円高だろうが「1ドル=98円」の為替予約は実行されます。「販売代金受け取り時における直物レート」すなわち、本来であれば「1ドル=108円」で受け取れるはずの円は受け取れません。「1ドル=10円」ぶん損が発生=10円✕100万(1,000万円)の損が為替予約における損失となります。

      設問は「F社の為替予約による損益と直物による損益とをあわせたネットの損益」を聞いているので、600万円の利益と、1,000万円の損失をあわせて、「400万円の損失」が答えとなります。

      次に2問目

      「G社もまた為替変動リスクに備えるため、先物市場においてドルの1ヶ月物先物を先物価格100円にて20万ドル分売建てた」とありますが、これは「1ヶ月後に20万ドルを1ドル=100円で売る(だけどまだ支払っていない)」ことを意味します。

      通貨先物取引は、将来の特定の時期に、特定の価格で売買することを現時点で約定する取引ですので、 将来ゲットできる20万ドルを「ドル」で持っていてもしょうがないので、円にどんなレートで変えるか、約定しておきましょう、ということです。

      余談ですが「先物市場において」とあるので、これは先渡取引ではなく先物取引ですね。

      さて、問題はここから。「1週間が経過した後、当初の予想に反し、直物レートは1ドル=105円の円安となった。これを受けてG社は反対売買による差金決済を行った。このときの先物価格は1ドル=103円であった。」

      「反対売買による差金決済」とは何か、を話す前に。この「差金決済」というワードをググると、「差金決済取引は禁止です!」みたいな証券会社の注意喚起ページがいくつもヒットします。

      » 差金決済取引の禁止 | ヘルプ&マニュアル | 大和証券

      先物取引の対概念である現物取引では、その名の通り「現物」である株券等の商品が取引の都度、受け渡されています。先物取引ではそのような仕組みではありませんでしたよね。「将来の売買を現時点で約定する」仕組みなので、「今この場で取引が終わる」ものではありません。

      先物取引は、まだお金を支払ったり受け取ったりしていない状態ですから、約定した内容を変更するのであれば、当初の契約時からの状況変化に対応した差額をやりとりすればいいんじゃね?ということで「差金決済」が特別に認められています。

      今回の状況を整理します。「20万ドルを1ドル=100円で売る約束をした(先物取引)」ものの、円安が進んでいるので、この取引を無かったことしたい、とG社は考えています。そこで「G社は反対売買による差金決済を行った。このときの先物価格は1ドル=103円であった」。

      つまり、「いまの先物価格は1ドル=103円なんだよね?だったら1ドル=100円との差額だけお支払いするよ、だから契約は無しで!」ということです。厳密に言えば契約を無かったことにはできないので103円で確定させているだけですが、差額決済を行うことで、20万ドルを1ドル=100円で売らず、「販売代金受け取り時における直物レート」で受けることができるわけです。

      では、1問目と同じように「通貨先物取引による損益」と「直物」による損益とにわけて考えてみましょう。

      まずは直物から。これは設問1と同じように考えます。「商品販売時であるこの時点での直物レートは1ドル=102円」で、「販売代金受け取り時における直物レートは1ドル=108円になっていた」ので、1ドル=6円ぶん得してる=6円✕20万(120万円)利益が出ている、と考えられます。

      次に通貨先物取引を考えます。これは差金取引のことです。

      1ドル100円で「売る!」と言ったものを、1ドル103円のレートのときに「やっぱ売らない!」と言っているので、売ったドルの「買い戻し」を行います。これが通貨先物取引の損失分です。100円で売ったものを103円で買い戻しているわけですから、3円✕20万(60万円)が損失となります。

      設問は「G社の通貨先物取引による損益と直物とをあわせたネットの損益」を聞いているので、120万円の利益と、60万円の損失をあわせて、「60万円の利益」が答えとなります。

      以上、先物取引を知らない素人受験生が、調べながら「こんな感じかな…?」とまとめてみた解説でした。ではまたー!

      よかったらシェアしてね!
      • URLをコピーしました!
      • URLをコピーしました!
      目次