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      リスクと向き合う前に、確定要素を固めておく。

      経営者思考とサラリーマン思考の一番の違いはなにか、という問いに、経営者はリスクと向き合い、サラリーマンはリスクを避けて確定要素を求める」という回答をよく見かけます。

      確かに、立場が高くなるにつれて不確定要素についての意思決定を行う機会は多くなります。経営学者のH.I.アンゾフは、ルーティン化されておらず、前例のない意思決定は主にトップ・マネジメントが行うものとし、それを「戦略的意思決定」と呼びました。また、戦略を実現するための戦術(指揮命令、組織統制)に関する意思決定を「管理的意思決定」、具体的でルーチン化した業務内容を指示するロワー・マネジメントを「業務的意思決定」と呼びました。

      「立場が人をつくる」とは良く言ったもので、経営者がリスクに立ち向かい、サラリーマンがルーチンワークを淡々とこなしていくのはある意味当たり前の話です。

      ただし、これはあくまで「会社」でのお話。ひとりの人間としては、自らの人生は自分で舵取りしなければいけません。高校受験、大学受験、結婚、マイホーム購入、妊娠、子育て、大病…、そして死。何をとってもルーチン的な意思決定では乗り越えられないことが人生ではいくつもあります。ときには戦略的な意思決定が私たちにも求められます。

      さて、そんなことから「リスクを避けて確定要素に逃げるのは間違い」的な言説をしばしば耳にすることがあります。

      2021年に心理学誌「Psychology」に発表された研究によると、1日のはじまりに簡単で期限に余裕のある仕事を片づける人は、「より難易度が高く、重要度も高い仕事」を先延ばししやすいのだとか。

      つまり、弾みがつくのは、先延ばしする傾向だというわけです。簡単で期限に余裕のある仕事から先に手をつけていると、たとえ重要性が高くても、難しい仕事には本腰を入れて取り組もうとしなくなってしまいます。

      これは、一種の「単純緊急性効果(mere urgency effect)」だと考えられます。単純緊急性効果とは、「客観的に見返りが大きく重要度が高いタスク」よりも、「重要度は低いが期限が近いタスク」を優先させてしまう傾向です。

      » 「先延ばしにする人」と「仕事が片付く人」では思考回路が真逆だった!(ライフハッカー[日本版]) – Yahoo!ニュース

      ルーチンワークになれた我々は、ついつい単純で答えのわかる仕事(業務的意思決定)を優先しがちですが、難易度が高く重要度も高い仕事(戦略的意思決定)は遠ざけがちです。

      「3000万円あるから、貯金するか、50%の確率で倍になるけど50%の確率で0円になる投資をするか選んで!」

      と言われたら、あなたはどちらを選びますか?

      私は間違いなく前者を選ぶでしょう。後者の選択肢にリスクプレミアム(リスク資産の期待収益率から無リスク資産の収益率の差分)が上乗せされていないからです。50%の可能性で1億円がもらえるのであれば後者を選ぶかもしれません。

      私たちは経験的に、「不確定要素の高い戦略的意思決定」を実行しなくても、日々が無難に過ぎていくことを知っています。受験よりも推薦入学を選び、起業よりも就職を選びがちになるのは、そちらのほうが未来を見通せるからです。

      「戦略的意思決定」をし続けることが人として正しい生き方、なのではなく、必要なタイミングでその意思決定を行うことが大切なのだと思います。

      「転職サイトの広告を見たらその場で決断する」前に、貯金をしておくとか、キャリアプランを立てておくとか、確定要素をしっかり固めておくことが、不確定要素の大きい意思決定を下支えします。

      むやみに決断しても失敗の可能性が高まることもまた、私たちは経験則で知っています。準備が整っていなければ先延ばししたっていい場合もあります。

      さて、この記事の冒頭、会社の話に戻りましょう。

      社長が「戦略的意思決定」に集中できるのは、なぜなのか。それは、社長だから自然と行えるのではなく、管理職が「管理的意思決定」を、現場の社員が「業務的意思決定」をしっかり実行してくれているので、社長に「戦略的意思決定」を行う余裕が十分に生まれるからです。

      これは人ひとり、個人としての意思決定に置き換えても同じことです。「リスクを避けて確定要素に逃げる」のではなく、戦略的意思決定を下支えする「管理的」「業務的」意思決定を実行しなければ、リスクをとる余裕は生まれないのです。

      自分自身のきたるべき「戦略的意思決定」のために、日頃から確定要素の洗い出し、そしてその準備を行っておきましょう。目の前にある小さな課題に向き合うことも、大きな決断と同じくらい大切なことです。

      ではまた!

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