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行政書士とプリンシパル=エージェント問題

プリンシパル=エージェント理論とは この理論は、市場の失敗の一例として取り上げられる理論のひとつです。

プリンシパルとは、依頼人のこと。エージェントとは、代理人のこと。

プリンシパルがエージェントに、なにかの目的のために、ある行動を依頼したとします。ある一定の状況下において、エージェントが、プリンシパルに対して誠実に行動せず、不利益をもたらす行動をとりがちになる、というのが、プリンシパル=エージェント理論です。

一定の状況下とは、プリンシパルとエージェント間に、情報の非対称性が存在する場合です。情報の非対称性がある場合、市場の失敗がおこり、パレート効率的な状態ではなくなります。(モラル・ハザードが起きる) わかりやすい例をひとつ挙げましょう。

「新型コロナウイルス感染症によりお客さんの激減した飲食店に対し、景気回復を狙って自治体が補助金を支出すると、それを見込んだ飲食店が経営努力を怠る」

この場合、プリンシパルは補助金を出す自治体であり、エージェントは飲食店となります。 プリンシパルはエージェントである飲食店に、「補助金を出すから、頑張って今まで通りお店を開店してねー」とお願いしますが、エージェントは補助金ありきで合理的な行動をとろうとしますので、「お金が入るならそこまで努力しなくてもいいか…」と、夕方にはお店を閉めてしまうエージェントが現れる、というわけです。

飲食店側は、「自治体の補助金があれば、夜働かなくても食べていけるだけの生活費をまかなえる」ことを知っていますが、自治体はその情報を持っていない(情報の非対称性がある)ため、このような問題が発生します。飲食店の存続は実現しますが、景気回復の効果は限定的になる、というわけです。

目次

私の身近に起きた、プリンシパル=エージェント問題

さて、一例ではわかりにくいと思うので、私の身近で起きた話をしたいと思います。お金の貸し借りでもめた結果、裁判を起こすに至った、なんともゲスいお話です。(ある程度、変形・脚色しています)

【登場人物】

きのこさん…お金を貸した人。借用書を交わしているが、期日までに支払いがない。
たけのこさん…お金を借りた人。お金をまったく返済しておらず、返済する気もない。
ひまわりさん…きのこさんが依頼した弁護士。

【おきた話】

きのこさんは、たけのこさんから頼まれ、1000万円を貸すことにしました。きのこさんとたけのこさんは、6ヶ月以内に返済することを旨とした借用書を交わしましたが、たけのこさんは、半年たっても、きのこさんにお金を返すことはありませんでした。 不安を感じたきのこさんは、たけのこさんに再三にわたり返済を求めるも、たけのこさんは応じず。困ったきのこさんは、弁護士のひまわりさんに、「裁判でなんとかならないか」と相談しました。

ひまわり弁護士は、「借用書もあるし、勝てる裁判ですよ!」ときのこさんを激励。きのこさんは、ひまわりさんに民事訴訟の代理人を依頼することにしました。きのこさんは、たけのこさんを相手に訴訟を提起することに。裁判は順調に進み、きのこさんは無事に勝訴。

裁判官
たけのこ氏は、きのこ氏に1000万円、ちゃんと返すよーに。

たけのこさんがきのこさんに1000万円支払うよう、判決が下されました。 ところが、たけのこさんがお金を返す気配はありません。困ったきのこさん&ひまわりさんは、預貯金などの差し押さえ手続き(強制執行)に踏み切りますが、口座はカラ。給与所得もなかったたけのこさんから、お金を回収することは出来なかったのです。 きのこさんは、たけのこさんからお金を回収できなかったばかりか、弁護士のひまわりさんに裁判で勝った成功報酬ならびに強制執行の費用として、150万円を支払うことになりました。裁判で勝てばお金が返ってくるとばかり思っていたきのこさんは、まさかの結果に意気消沈。 ひまわりさんは弁護士なので、勝訴してもお金が返ってこない可能性があること、その場合でも報酬をいただくことは当たり前のことだと思っていましたし、委任契約書にも書いてあることなので、きのこさんもそのことは理解している、と思い込んでいたようです。

合理的に行動した結果として起こる、モラル・ハザード。

依頼者のきのこさんも、代理人のたけのこさんも、各々の利益のために行動した結果として、上記のようなことが起きてしまったのです。 そもそも、依頼者(=プリンシパル)であるきのこさんは、訴訟については素人。代理人(=エージェント)の弁護士ひまわりさんは、訴訟のプロ。 2人の間には「情報の非対称性」が存在しています。もちろん、きのこさんが自分でよく調べず、委任契約書を隅々まで確認せず、訴訟を弁護士のひまわりさんに任せっきりにしていたことは、大きな落ち度と言えますが、一般人と弁護士との間には、法律や訴訟に対する知識に雲泥の差があることは明らかです。 また、ひまわりさんにとって「返ってこない場合」をきのこさんにあえて忠告することは、 <裁判を継続できなくなる=「勝訴し、成功報酬を得る」ことができなくなるリスク> を高めることになりますので、そういった非合理的な行動をとる可能性は低かったのかもしれません。 きのこさんも、ひまわりさんも、それぞれが合理的な判断として行動した結果ですが、きのこさんにとって、ひまわりさんの行動は不利益につながった、というわけです。

行政書士でも同様のことは起こりうる。

さて、行政書士も弁護士と同じく、「他人の依頼を受け報酬を得て」仕事を遂行する、エージェントの立場です。自身が代理人であり、依頼者とは「情報の非対称性」があることを認識しておかないと、モラル・ハザードの問題が発生しかねないことを、頭の片隅に留めておく必要がありそうですね。   依頼者にとっての利益とはなにか? 自身の利益を考えることはもちろん大切ですが、時には依頼者の利益と相反することも起こり得ることを、心に留めながら仕事と向き合う必要があるのだと思いました。   街づくり行政書士の遠藤でした。それではまたー。]]>

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この記事を書いた人

遠藤 諒のアバター 遠藤 諒 行政書士

【遠藤行政書士・街づくり支援事務所】の行政書士です。仕事を通じて「地域を誇りに思える街づくり」に携わっていきます。

建設業許可・産業廃棄物収集運搬業許可、各種補助金申請、街づくり関係(NPO設立、運営相談)を主な守備範囲としています。

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