いつもお呼びいただいているFMたちかわ「イ.ズ.ム.」で話すネタが思いつかなかったので、最近自分が気になっていること、ぼんやり考えていることをまとめてみることに。特に公開することでもないのですが更新の少ないこのブログのネタとして供養したいと思います!
・GDP4位転落と、行政書士。
つい先日、日本の名目GDPが世界4位に転落したことがニュースになっていましたね。
内閣府が15日発表した2023年の名目国内総生産(GDP)は591兆4820億円だった。ドル換算すると、4兆2106億ドルとなり、ドイツよりも2400億ドル少なく、世界4位に転落した。
» 日本の名目GDP、ドイツに抜かれ世界4位に転落…68年以来の「日独逆転」 : 読売新聞
ちなみに、日本の一人あたり名目GDPは、2023年10月時点で世界34位と、先進7カ国の中でも最下位でした。一般的な話として、一人あたりのGDPを変動させる要素として、生産性の高低、労働生産人口の多寡があります。一人ひとりの生産性を上げるか、全人口における生産者の数を増やせば、一人あたりのGDPが増える、ということですね。
今日は生産性の観点から、開業率、廃業率について考えてみたいと思います。
2023年の中小企業白書によると、開業率は、1988年度(約7.5%)をピークとして低下傾向に転じた後、2000年代を通じて緩やかな上昇傾向で推移してきましたが、2018年度に再び低下しています。2020年度は4.4%に。
開業率:当該年度に雇⽤関係が新規に成⽴した事業所数/前年度末の適⽤事業所数
廃業率は、1996年度以降増加傾向で推移していましたが、2010年度(約5%)からは低下傾向で推移しており、2020年度は3.1%に。
廃業率:当該年度に雇⽤関係が消滅した事業所数/前年度末の適⽤事業所数
開業率も廃業率も低いということは、社会が安定しているとも読み取れますが、新陳代謝が進んでいないことを同時に意味していますよね。ちなみに開業率の比較では、英国(2021年)が12.4%、米国が9.4%、ドイツが7.2%、フランスが11.3%です。他国と比較しても日本の開・廃業率はかなり低い傾向にあります。
開業率が低いということは、企業間の競争が起こりにくいことを意味します。競争が起これば、より優れた技術を持ち生産性の高い企業が生き残り、そうでない企業は廃業するので、産業全体の質が高まります。単純には言えませんが、開・廃業率が高いほうが産業全体が活性化しますので、高いほうがいいわけです。
日本には新しくビジネスを始めたり、業種転換・多角化するための補助金制度が多くあります。創業支援の補助金としては、東京都中小企業振興公社さんや商工会議所が行っている助成・補助事業が有名です。
・東京都中小企業振興公社:創業助成事業(300万円、2/3補助)
→創業後5年未満の中小企業者等が対象。
・小規模事業者持続化補助金(創業枠)(200万円、2/3補助)
→小規模事業者なので商業・サービス業者は従業員数5名以下が対象。
他にも、第三者から事業を承継・引き継ぎするための補助金もあります。
・事業承継・引継ぎ補助金(600~800万円、1/2~2/3補助)
→中小企業・小規模事業者が対象。
書きながら思ったことですが、行政書士って思っている以上に世の中で認識されていないのかもしれません。行政書士は「許認可や行政手続の専門家」ですが、行政書士法に基づき、申請者本人の代理として補助金の申請資料作成を行ったり、有償で申請代行することができます。
新しくビジネスを始める際に必要な許認可と補助金、どちらも行政書士にご依頼いただけますので、新しくビジネスを始める方は、まずはお近くの行政書士にご相談いただければと思います。
・AIの影響がいよいよ大きくなってきた
ChatGPTが話題になったのが2022年末。登場から1年以上が経ちましたが、我々の仕事に大きな影響を与える日が、かなり近くまで迫っているようです。先月IMF(国際通貨基金)から出たレポートによると、先進国の雇用者のうち、60%の人口が影響を受けると言われています。
先進国では、約60%の雇用がAIの影響を受ける可能性がある。AIに晒される雇用のうち、約半分がAIの統合で生産性が向上し、恩恵を受けられる見込みとなっている。残りの半分については、現在は人間が行っている主要業務をAIアプリケーションが担うようになることで、労働需要の減少が生じ、ひいては賃金低下や雇用削減が起きるおそれがある。極端なケースでは、こうした雇用の一部が消滅してしまうかもしれない。
» AIで世界経済が変わる。人類が恩恵を受けるようにすべきだ。 (IMF BLOG)
行政書士界隈ではまだAIに直接関連する話題としては、契約書の「リーガルチェック」をAIが行うサービスの登場でしょうか。ただ、こちらは行政書士というより弁護士が仕事として担っている部分が大きいので、現状、大きな影響には至っていません。
大きな話題としては、会計ソフトのfreeeさんが「freee(フリー)許認可」というサービスを開始。軽貨物運送事業、古物商、古物商変更届、飲食店営業、美容室・理容室、宅建業免許、建設業、産業廃棄物収集運搬等の申請をサポートするビジネスを開始しています。
freee許認可は質問に答えていくだけで、申請書類が出来上がる大変便利なサービス。今のところ行政書士にとっての一番大きな強敵と言えそうです。こちらは人工知能ではなく、行政側の電子申請サービス開始と歩調を合わせたものでしょう。今まで行政窓口に持参しなければならなかったものが電子申請できるようになれば、freee許認可のようなデジタルサービスは一般国民にとって使い勝手の良いものになるでしょう。
ここでフィリップ・コトラーの競争戦略理論を参照してみたいと思います。
マーケティングの父とも言われる経営学享受のフィリップ・コトラーが1980年に提唱した競争戦略の理論が、「競争地位戦略」です。競争地位戦略では、企業をマーケットシェアの観点から4つに類型化し、競争地位に応じた戦略目標を提示しました。
例えば、将来の「許認可」マーケットについて考えてみましょう。リーダーは、freee許認可のようなデジタルサービスになる可能性が高いと私は思います。WEBサービス会社や行政書士法人が同様の仕組みを提供するでしょうから、これらはチャレンジャーになります。
そうすると、個人の行政書士の多くはニッチャーまたはフォロワーとして生き残ることになりますが、フォロワーとして戦うのは負け戦ですので、避けるべきです。自ずと取るべき戦略は「ニッチャー」ということに。
ニッチャーは「大企業が参入しにくい特定分野に資源を集中させ、独自性や専門性を確保」する戦略をとりますので、例えば「デジタルではなく対面に特化する」とか、「地域に特化する」とか、リーダーが取り扱わない分野を取り扱う等の戦略が考えられます。
日本の中小企業数は、約336万社。全企業数が337万社ですから、実に99.7%が中小企業です。多くの中小企業にとって、DX化は大きなメリットがありますが、世の中のAI化が進むと、個々の企業にとっては「フォロワー」の立ち位置となりかねません。フォロワーではなくニッチャーになれるか、リーダーになれるマーケットに移動できるか、真剣に考える必要がありそうです。
我々行政書士としても、私個人の生き残りはともかく、AI化の流れにおける中小企業の支援のあり方をこれから模索していかなければならないと思っています。一緒に頑張っていきましょう。